2026年2月26日、建築業界の常識を覆す革新的なニュースが飛び込んできました。滋賀県草津市のスタートアップ 株式会社ベホマル が、建築後も大気中の二酸化炭素(CO2)を吸収・固定し続ける新素材 「DACストランドボード」 の商品化を発表したのです。
これまでの木材活用は、樹木が成長過程で取り込んだ炭素を「貯蔵」する 「静的な固定」 が主流でした。しかし、本製品は 「建てた後も炭素を減らす」 という、全く新しい時間軸の機能を備えています。

本記事では、この次世代建材の仕組みや技術的背景、そして私たちの社会をどう変えるのかについて、専門的な視点から分かりやすく解説します。
1. DACストランドボードとは?「動的な炭素除去」の実現
DACストランドボード は、大気中のCO2を直接回収する技術(DAC: Direct Air Capture)を木質建材に融合させた世界初の製品です。
従来の木材との違い
- 従来の木材: 伐採・加工された後は、内部に炭素を溜めておくだけ。
- DACストランドボード: 施工された後も、室内の空気からCO2を能動的にキャッチし、素材内部に固定し続ける。
この「動的な炭素除去」により、建築物そのものが 「大気浄化装置」 として機能するようになります。
2. コア技術「美環(びのわ)®」と超分子化学の力
この驚異的な機能の核となるのが、ベホマルが開発したバイオマス由来のCO2吸収材 「美環(Binowa)®」 です。
科学的根拠:CD-MOF(シクロデキストリン金属有機構造体)
この素材には、2016年のノーベル化学賞で注目された 「超分子化学」 の知見が応用されています。デンプンから作られる環状オリゴ糖(シクロデキストリン)とカリウムイオンなどを組み合わせた「ナノ多孔質材料」が、分子レベルの網(ポア)として機能します。

- 吸収メカニズム: 直径約 $1.7 \text{ nm}$ の微細な穴が、大気中に希薄なCO2を選択的に捕捉。
- 吸収能力: 自重の約 3〜5% のCO2をわずか6時間で吸収する高い反応性を持ち、最大で $12.6 \text{ wt\%}$ もの吸収が可能です。
3. 実用性を支える「不燃技術」と産官学の連携
建材として普及するためには、環境性能だけでなく「安全性」と「供給体制」が不可欠です。本製品は、滋賀県・岐阜県を中心とした強力なパートナーシップによって支えられています。
| 参画組織 | 役割と貢献 |
| 株式会社ベホマル | CO2吸収素材 「美環®」 の開発・DAC技術提供 |
| 株式会社エスウッド | 独自の 「不燃材料認定」 ストランドボード製造技術 |
| 株式会社内藤建築事務所 | 公共建築等への導入設計・デザイン監修 |
| 株式会社桑原組 | 建築現場への施工・地域インフラへの実装 |
| 立命館大学 | インキュベータを通じた研究開発支援 |
安心の不燃性能
基材には、株式会社エスウッドの独自技術が採用されています。木材の風合いを保ちながら、薬剤を芯まで浸透させることで 「不燃材料」 の認定を取得。これにより、学校や病院、商業ビルなどの内装制限があるエリアでも安心して使用できます。
4. 導入による環境インパクト:どのくらいCO2が減るのか?
DACストランドボードを導入することで、具体的にどの程度の脱炭素効果があるのでしょうか。

- ボード1枚あたりの吸収量: 約 $7 (ペットボトル2本分相当のCO2)
- 会議室への施工(30平米): 総炭素固定量は約 $320 kg
- 比較対象: スギの木約20本が1年間に吸収する量に匹敵します。
都市部では大規模な森林を作ることは困難ですが、内装材をこのボードに変えるだけで、ビル全体を 「人工の森林」 に変えることができるのです。
5. まとめ:日常を「CO2回収スポット」に変える未来へ
株式会社ベホマルの代表、西原麻友子氏は 「日常をCO2回収スポットに」 というビジョンを掲げています。
DACストランドボードの登場は、私たちが建材を選ぶ基準を「安さやデザイン」から 「地球環境への責任」 へとアップデートする契機となるでしょう。特別なメンテナンスを必要とせず、ただそこに壁や天井があるだけで脱炭素に貢献できる。そんな未来が、2026年2月26日から本格的に始まりました。
記事のポイント
- 建てた後もCO2を吸収し続ける 革新的な建材。
- ノーベル賞級の超分子化学 に基づいた「美環®」技術。
- 不燃認定取得 により、公共施設やオフィスでも利用可能。
- 地場企業と大学の連携 から生まれた地域発のイノベーション。
サステナブルな建築やESG投資を検討している企業にとって、DACストランドボードは最も注目すべき「未来のピース」となるはずです。
執筆協力・参照元: 株式会社ベホマル、株式会社エスウッド、立命館大学、内藤建築事務所、桑原組 各資料(2026年2月26日発表時点)