2026年2月20日、東京大学発のバイオテクノロジー・スタートアップ、株式会社Rhelixa(レリクサ)が、少数のDNAデータから高精度に生物学的年齢(体の実年齢)を推定する新手法について、特許を取得したことを発表しました。
これまでの老化測定の常識を覆すこの技術は、アンチエイジングや予防医療の現場にどのような革新をもたらすのでしょうか。本記事では、特許技術の核心から、私たちが受けられる最新の検査サービスまで、専門的な視点から分かりやすく解説します。

1. 「生物学的年齢」とは?なぜ今注目されているのか
私たちは普段、誕生日からの経過日数である「暦年齢」で年齢を数えます。しかし、同じ40歳でも、見た目が若々しく健康な人もいれば、老化が進んでいる人もいます。
この個体差を科学的な数値として可視化したものが「生物学的年齢」です。
DNAメチル化が教える「細胞の記憶」
生物学的年齢を測る指標として、現在最も信頼されているのがDNAメチル化の解析です。これは「エピジェネティック・クロック(DNAメチル化時計)」と呼ばれ、生活習慣や環境要因によってDNAに刻まれた「老化のサイン」を読み取る技術です。

Rhelixaはこの分野のパイオニアであり、日本人のデータに基づいた精密な解析を提供しています。
2. 特許取得技術のすごさ:「少数学習」と「転移学習」
今回、Rhelixaが取得した特許(特許第7798383号)の最大の特徴は、少ないデータ量でも極めて高い精度で年齢を推定できる点にあります。
従来の課題をAI技術で解決
従来、高精度な予測モデルを作るには、数千人から数万人規模の膨大なDNAデータが必要でした。しかし、特定の疾患を持つグループや小規模なコミュニティでは、これほど多くのデータを集めることは困難です。
Rhelixaは、AI分野の高度な手法である「転移学習(Transfer Learning)」をゲノミクスに応用しました。
- 転移学習とは: 大規模な一般データから学んだ「老化の基本パターン」を、特定の少人数グループに適用させる技術。

これにより、日本人特有の体質や、特定の疾患リスクを抱える人々に対しても、パーソナライズされた超高精度な老化測定が可能になりました。
3. 実用化される「エピクロック®テスト」で何がわかる?
Rhelixaが展開する「エピクロック®テスト」は、既に100以上の医療機関で導入が進められています。今回の特許技術により、その精度と信頼性はさらに強固なものとなりました。
受検者は、わずかな採血(今後は口腔粘膜にも対応予定)で以下のような多角的な指標を知ることができます。
| 評価カテゴリー | 具体的な指標 |
| 基本老化 | 生物学的年齢、老化速度、テロメア長 |
| 身体・臓器機能 | 肺機能、腎機能、運動機能の予測 |
| 代謝・循環 | 血管の健康状態、代謝機能 |
| 免疫・炎症 | 慢性炎症の程度、免疫年齢 |
特に注目すべきは「老化速度」です。自分が1年間に何歳分老いているかを数値化することで、現在行っている食事や運動の効果を客観的に評価できるようになります。
4. 産学連携で進む「病気にならない体づくり」
Rhelixaは、国内の主要大学と共同で、この特許技術を特定の疾患予防に応用する研究を加速させています。
- 順天堂大学: 血液データから軽度認知障害(MCI)を早期検出するモデルの開発。
- 名古屋大学: 生物学的年齢に基づく感染症(COVID-19等)の重症化リスク予測。
- 東京大学: リボソームDNAに着目した、より高感度な次世代老化マーカーの研究。
- 神戸大学: 若年層のメンタルヘルス(抑うつ・ストレス)のバイオマーカー開発。
これらの研究は、老化を「避けられない運命」ではなく「数値で管理し、介入できるプロセス」へと変えようとしています。
5. まとめ:予防医療は「一律」から「個別」の時代へ
Rhelixaの特許取得は、日本の精密長寿医学における大きな一歩です。

少数のデータから精度の高い結果を導き出す技術は、希少な症例や個人のライフスタイルに寄り添った「個別化医療」を実現する鍵となります。
「正しく老化を知ることで、年齢を巻き戻す」
そんな未来が、すぐそこまで来ています。自分の「体の実年齢」を知ることは、100年時代をより豊かに、より健康に生き抜くための新しいスタンダードになるでしょう。
株式会社Rhelixa(レリクサ)について
東京大学大学院の仲木竜氏が創業した、エピジェネティクス解析のリーディングカンパニー。最先端のゲノム解析技術とAIを組み合わせ、老化の可視化と制御を目指す「エピクロック®共創プロジェクト」を推進しています。