「このままでは想定金利は4パーセントに達する。国債費はさらに上振れしそうだ」。
8月末に財務省が締め切った2027年度予算の概算要求において、国債の利払い費の計算前提となる想定金利は3.8パーセントと設定されました。しかし、財務省幹部からは早くもその前提の見直しを覚悟する声が漏れ聞こえてきています。

本記事では、想定金利が上昇する背景や、それに伴う国債費の増加が日本経済や私たちの暮らしにどのような影響を及ぼすのかを、詳細かつわかりやすく解説します。
2027年度予算の概算要求と想定金利の現状
毎年8月末に行われる概算要求は、各省庁が翌年度に必要な予算を見積もり、財務省に提出する重要なプロセスです。
その中で、国の借金である国債に対する利子の支払い、すなわち利払い費の規模を算出するための基準が想定金利です。

財務省が直面する想定金利の壁
2027年度の概算要求における想定金利は、異例の高さである3.8パーセントに設定されました。
近年まで続いた大規模な金融緩和の時代には、この数字は1パーセント台から2パーセント台前半で低く推移していました。しかし、昨今の金融政策の歴史的な転換に伴い、市場の長期金利は明確な上昇トレンドを描いています。
財務省内部で「4パーセントに達する」との強い危機感が共有されているのは、市場金利の上昇ペースがこれまでのシミュレーションを上回る可能性があるためです。想定金利を現実の市場環境に即して引き上げざるを得ない状況は、すでに厳しい状態にある国家財政にとって極めて大きなプレッシャーとなっています。
国債費のさらなる上振れリスクとは
国債費とは、過去に発行した国債の元本返済と利払いに充てられる予算のことです。国の一般会計歳出の中でも約4分の1を占める非常に大きな項目です。想定金利が上がれば、当然ながら新たに発行する国債や借り換えを行う国債の利払い費の計算額は急激に膨らみます。
もし想定金利が4パーセントの大台に乗るようなことがあれば、利払い費だけで数兆円規模の増加が見込まれます。
これは、本来であれば社会保障、子育て支援、教育、インフラ整備などに回せたはずの貴重な財源が、借金の利息返済に消えてしまうことを意味します。これが財務省が最も恐れる「国債費の上振れリスク」の本質です。
想定金利上昇の背景と日本経済への影響
なぜここまで金利が上昇しているのでしょうか。その背景には、日本銀行による金融政策の正常化と、国内外の経済動向が複雑に絡み合っています。ここでは、その主な要因を紐解きます。

日本銀行の政策転換と金利のある世界
長年にわたり、日本は世界でも類を見ない規模の公的債務を抱えながらも、日銀が国債を大量に買い入れることで金利を人為的に極めて低く抑え込んできました。しかし、世界的なインフレの波や国内の物価上昇を背景に、日銀はマイナス金利政策を解除し、事実上の利上げに踏み切りました。これにより、日本は長きにわたるゼロ金利時代を終え、本格的な「金利のある世界」へと移行しました。
中央銀行が政策金利を引き上げると、それに連動して市場の長期金利も上昇します。市場参加者は今後のさらなるインフレ動向や日銀の追加利上げの可能性をいち早く織り込み、国債の利回りを引き上げて取引を行います。
金利上昇がもたらす国家財政への負担
金利が1パーセント上昇するだけで、数年後には数兆円単位で利払い費が増加すると政府は試算しています。国家財政への負担は年々重くなり、予算の使い道が制限される財政硬直化がさらに進行することは避けられません。
機動的な経済対策を打つための財政的な余力が失われることは、大規模な自然災害への対応や、将来の経済危機への備えが脆弱になることを意味し、日本経済にとって大きなマイナス要因となります。
財務省の見直しと今後の財政運営

概算要求はあくまで各省庁からの「要求」の段階であり、年末の予算案決定に向けて財務省による厳しい査定が行われます。
しかし、国債費に関しては他の政策経費のように削ることができない義務的経費であるため、市場の金利動向次第で予算規模が自動的に決まってしまうという難しさがあります。
概算要求後の修正の可能性
年末の予算編成に向けた作業の最終段階において、実際の市場金利の動向を踏まえて想定金利が再計算されるのが通例です。現在の状況を見る限り、8月時点の3.8パーセントからさらに上方修正される可能性は十分にあり、財務省幹部の懸念は現実味を帯びています。
もし想定金利が引き上げられれば、限られた予算の枠組みの中で他の政策的経費を圧迫し、予算編成は極めて困難なものになるでしょう。防衛費の増額や少子化対策の財源確保も課題となる中、増税や社会保障費の削減といった、国民に痛みを伴う議論が再燃する可能性も高まっています。
私たちの生活と今後の見通し
国の借金の利払いが増えることは、決して私たち国民に無関係なマクロ経済の話ではありません。国家予算の中で国債費の割合が増え続けると、結果として私たちの暮らしに直接的な影響を及ぼします。

日常生活への具体的な波及
- 行政サービスの低下: 地方交付税交付金や各種補助金が削減され、身近な公共サービスが低下する恐れがあります。
- 将来の増税リスク: 膨らむ国債費を補うため、将来的な消費税の引き上げや所得税の増税が議論される土壌が形成されます。
- 住宅ローン金利の上昇: 国債の金利上昇は、金融機関の貸出金利の基準となります。変動金利で住宅ローンを組んでいる家庭では、月々の返済負担が増加するリスクが高まります。
- 企業の資金調達コスト増加: 企業の借入金利も上昇するため、積極的な設備投資が控えられ、結果として賃上げの鈍化や雇用環境の悪化を招く懸念があります。
まとめ:想定金利4パーセント時代に備える
2027年度予算の概算要求で浮き彫りになった、想定金利の急上昇と国債費の上振れ懸念。
「このままでは想定金利は4パーセントに達する」という財務省の危機感は、日本がいよいよ本格的な「金利のある世界」に突入し、その痛みを伴う現実と直面していることを明確に示しています。
国の財政が大きな転換点を迎える中、私たち個人も金利動向や国の財政状況の変化を注意深く見守る必要があります。家計の防衛や資産形成において、金利上昇時代を見据えた新しい対応を考えていくことが、これまで以上に求められています。