これまで、ローカルで生成AIを動かす環境といえばNVIDIA製GPUを利用した構築が主流でした。
しかし、新たにリリースされたUbuntu 26.04 LTSによって、その勢力図に大きな変化が起きています。AI開発者やクリエイターにとって最大のトピックは、AMD ROCmが公式ソフトウェアリポジトリにネイティブ統合されたことです。

この記事では、Ubuntu 26.04 LTS環境においてAMD GPUを活用し、手間なくローカル生成AI環境を構築する手順やメリットについて、詳しく解説します。
Ubuntu 26.04 LTSにおけるAMD ROCmの進化
Ubuntuの最新長期サポート版である26.04 LTSは、ローカルAI環境の構築において画期的なアップデートをもたらしました。

公式リポジトリへのネイティブ統合によるメリット
従来、Ubuntu上でAMD GPUを利用して高度なAI開発を行うためには、サードパーティ製のリポジトリをシステムに追加し、煩雑なドライバーのインストールや競合の解決を手動で行う必要がありました。
これは多くのエンジニアや初心者にとって大きな導入障壁となっていました。
しかし、Ubuntu 26.04 LTSではROCmが公式のaptリポジトリに完全に組み込まれました。
これにより、依存関係の解決やセキュリティアップデートがOS標準のパッケージマネージャーで完結するようになり、環境構築の手間が劇的に削減されています。複雑なドライバー競合に悩まされることなく、安定したGPGPU環境を手に入れることができます。
バージョン7.1以降のROCmがもたらす恩恵
公式リポジトリへの統合により、ユーザーはROCmバージョン7.1以降の最新機能へ簡単にアクセスできるようになりました。
この最新バージョンでは、最近のRDNAアーキテクチャ搭載GPUのサポートが大幅に強化されており、推論および学習プロセスの最適化が進んでいます。
生成AIの分野において、より高速かつ効率的にVRAMを活用できるため、ローカルマシンの計算資源を最大限に引き出すことが可能になります。
AMD GPUを利用した生成AI環境の構築手順
ここからは、実際にUbuntu 26.04 LTS上でROCmを導入し、生成AIを動かすための具体的なステップバイステップ手順を解説します。

動作環境とシステム要件の確認
まずは、搭載しているAMD GPUがROCmに対応しているアーキテクチャであるかを確認します。
最新のRadeon RXシリーズやデータセンター向けのInstinctアクセラレータが主なサポート対象となります。端末を開き、システムがGPUデバイスを正しく認識しているかを標準のPCIデバイス確認コマンドでチェックしてください。
aptコマンドを使ったROCmのインストール
公式リポジトリを活用することで、導入プロセスは驚くほどシンプルになります。以下のコマンドを実行するだけで、必要なディスプレイドライバーから演算ライブラリ群までが一括でインストールされます。
sudo apt update
sudo apt install rocm-core rocm-libs
これだけで基本的なインストールは完了です。
外部のGPGキーを追加したり、ソースリストを編集したりする必要はありません。インストール完了後は、システムを再起動してカーネルモジュールをリロードさせます。再起動後、専用のシステム情報確認ツールであるrocminfoなどを実行し、GPUが正常に認識されていることを確認しましょう。
生成AIフレームワークの導入
ROCmの基盤が整った後は、AIモデルを動作させるためのフレームワークをインストールします。
代表的なディープラーニングフレームワークであるPyTorchも、ROCm環境を強力にサポートしています。Pythonの仮想環境を構築した上で、公式ページで案内されているROCm対応版のPyTorchをpipコマンドで導入するのが最適な方法です。これにより、開発プロジェクトごとに依存関係をクリーンに保つことができます。
ローカルAI環境での具体的な活用例
ROCm対応のフレームワークが導入できれば、さまざまなオープンソースAIをローカルPC上で実行できるようになります。

大規模言語モデルのローカル実行による業務効率化
Hugging Faceなどのプラットフォームで公開されているオープンソースの大規模言語モデルをダウンロードし、自身のPC上で対話型AIとして稼働させることが可能です。ローカル実行最大のメリットは、クラウドAPIに依存しない点にあります。

企業の機密情報を扱うデータ分析や、オフライン環境下でのコード生成支援などにおいて非常に有用です。ROCmの優れた並列計算能力により、自然で高速なテキスト生成が実現します。
画像生成AIの活用とクリエイティブ制作
Stable Diffusionに代表される画像生成AIも、ROCm環境で快適に動作します。
ROCm対応のバックエンドを持つWebUIを導入することで、ブラウザ上から直感的な操作で高品質な画像を生成できます。公式リポジトリ統合のおかげで、環境構築時にありがちだった依存ライブラリの不足エラーに遭遇する確率も大幅に減少し、クリエイティブな作業に集中できる環境が整います。
環境構築時の注意点と運用面のトラブルシューティング
公式統合によって初期構築は極めて簡単になりましたが、安定運用に向けていくつか留意すべき点が存在します。
まず、OSのカーネルアップデートが行われた際には、ROCm関連のパッケージもaptを通じて最新の状態に保つように心がけてください。バージョンの不一致が原因でパフォーマンスが低下する場合があります。
また、Pythonのバージョン管理にも注意が必要です。使用するAIフレームワークが推奨するPythonバージョンとシステム環境が一致しているかを常に確認しましょう。
万が一エラーが発生した場合は、公式のUbuntuコミュニティフォーラムやAMDの公式ドキュメントを参照することで、信頼性の高い最新の解決策を得ることができます。
まとめ
Ubuntu 26.04 LTSにおけるAMD ROCmの公式ソフトウェアリポジトリ統合は、ローカル生成AI環境の構築という分野においてゲームチェンジャーとなるアップデートです。
これまで環境構築の煩雑さからAMD GPUを敬遠していた開発者やクリエイターにとっても、導入のハードルは劇的に下がりました。
コマンド一つで最新のROCm環境が手に入るこの機会に、Ubuntu 26.04 LTSとAMD GPUの組み合わせを活用し、安全かつ自由度の高いローカルAI開発環境を構築してみてはいかがでしょうか。