家庭用ゲーム機の歴史において、コントローラーの「ボタン配置」は長らく固定されたものでした。しかし、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)が新たに取得した特許が、この常識を根底から覆そうとしています。
2026年1月、米国特許商標庁(USPTO)にて公開された特許第12,533,573 B2号。そこには、物理ボタンを廃し、表面全体がタッチスクリーンとなった次世代コントローラーの構想が描かれていました。

本記事では、この革新的な特許の内容と、それが私たちのゲーム体験をどう変えるのか、専門的な視点から詳しく解説します。
1. 「ボタンレス」が実現する究極のカスタマイズ性
今回の特許の最大の特徴は、コントローラーの表面が**アダプティブ・サーフェス(適応型入力面)**になっている点です。
ジャンルに合わせて「形」が変わる
従来のDualSenseでは「△〇×□」やアナログスティックの位置は固定でしたが、この新技術ではソフトウェア側で自由に配置を変更できます。
- 格闘ゲーム: アーケードコントローラーのような「6ボタン配置」に拡大
- レーシングゲーム: 画面中央を巨大な「仮想ステアリング」として使用
- FPS: プレイヤーの指の長さに合わせて、スティックやトリガーの位置をミリ単位で最適化
- RPG: 複雑なメニューショートカットやアイテムスロットを前面に配置
これにより、「手の大きさに合わない」「特定のボタンが押しにくい」といった物理的な制約からプレイヤーが解放されます。
2. タッチパネルの弱点を克服する「4層センサー」技術
「タッチスクリーンだと誤入力が増えるのでは?」という懸念に対し、ソニーは高度なセンサー技術で解決を図っています。

プレタッチ(非接触検知)
筐体内部の光学センサーが、指が表面に触れる前の「接近」を検知します。これにより、どのボタンを押そうとしているかをデバイスが予測し、反応速度を高めます。
圧力と熱による「意図」の判別
単に触れただけでは反応させず、圧力センサーと温度センサーを組み合わせることで、「指を置いているだけ(待機状態)」と「意図的に押し込んだ(入力)」を明確に区別します。これにより、従来のボタンに指を添えておく感覚を再現しています。
| 搭載センサー | 役割 |
| 光学センサー | 指の接近(プレタッチ)と移動速度の検知 |
| 静電容量センサー | タッチ位置の特定 |
| 圧力センサー | 押し込みの強さ(クリック感)の判定 |
| 温度(熱)センサー | 人間の指か、物体の接触かを識別 |
3. 「触覚」を再定義するハプティクス進化
物理ボタンがないことによる「操作感の喪失」を補うのが、素材自体が変形する次世代ハプティクスです。

表面が隆起する「デフォーマブル・サーフェス」
特許には、マイクロ流体や圧電素子を用いて、スクリーン表面を物理的に盛り上がらせる技術が含まれています。ゲームを起動すると、平面だったスクリーンに「ボタンの縁」や「スティックのガイド」が浮かび上がり、ブラインドタッチを可能にします。
熱ハプティクス
ペルチェ素子の採用により、コントローラーの温度を変化させる構想もあります。氷の魔法を使えば冷たくなり、砂漠のステージでは熱を帯びるといった、視覚・聴覚・振動を超えた第4の感覚が導入されるかもしれません。
4. アクセシビリティ:すべての人にゲームを
この特許の背景には、ソニーが注力する「インクルーシブ・デザイン(包摂的設計)」があります。
身体的な制限を持つプレイヤーにとって、固定されたボタン配置は時に高いハードルとなります。タッチスクリーン化により、ボタンを巨大化させたり、指の可動範囲内に全ての操作系を集約させたりすることがソフトウェアの更新だけで可能になります。
また、指紋や握り方の癖からユーザーを自動認識し、コントローラーを手に取った瞬間に「自分専用のレイアウト」がロードされる機能も検討されています。
5. 実用化への課題とPS6への期待
この特許は非常に魅力的ですが、製品化にはいくつかのハードルが存在します。

- 製造コスト: 全面スクリーンと高度なセンサー群は、現行のDualSenseよりも高価になる可能性が高いです。
- バッテリー駆動時間: スクリーンの発光とセンサーの常時駆動は電力を消費します。省電力技術の向上が不可欠です。
- 入力遅延(レイテンシ): 競技シーンでは1ミリ秒の遅れが致命的です。AIによる行動予測などでこの遅延をどう相殺するかが鍵となります。
PlayStation 6(PS6)での採用は?
業界アナリストの間では、この技術が次世代機であるPlayStation 6の標準コントローラー、あるいは「DualSense Edge」のようなプレミアムモデルとして登場するのではないかと予測されています。
まとめ:ゲームの「持ち方」が変わる未来
ソニーの新しい特許は、ハードウェアがユーザーに合わせるという**「適応型インターフェース」**の未来を示しています。
物理的なボタンという制約がなくなることで、ゲーム開発者はこれまでにない斬新な操作体系を考案できるようになるでしょう。私たちの手に馴染んだ「いつものコントローラー」が、画面の中で無限の形に変わる日は、そう遠くないかもしれません。
免責事項: 本記事は特許情報を基にした分析であり、ソニー・インタラクティブエンタテインメントによる製品化を保証するものではありません。